~第参拾捌幕~

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翔次も大護も、真っ先に同じ疑問が脳裏を過った。 しかしそれを直接問うよりも先に、虹平は不敵に笑みを浮かべながら口を開く。 「火渡翔次…貴方は俺に、色んなものをくれた大恩人だ」 「だったら、なんでこんな事を!」 そんな虹平に対し、大護は我慢しきれずに思わず声を張った。 そして虹平はそれに答えるように、また小さく口を開く。 「だけど…それ以上に"大切なモノ"を奪われた」 「………」 「何モノにも替え難い大切なモノだ。だから俺は貴方に復讐したい…」 それに対し翔次は静かに目を閉じ、長くフーッと息を吐いて呼吸を整え、口を開いた。 「…言いたい事はそれだけか…?」 その瞬間、二人は一瞬にして共に抜いた刀でぶつかり合った。 「意外だった…?」 「……!」 「他の弟子達は皆師に忠実なのに、俺だけがこうして貴方に歯向かってさ」 それから二人は凄まじい攻防を繰り広げながら会話を交わし、一方で大護は何も出来ない。 そして何よりわからないのは、翔次は虹平から何を奪ってしまったのか…。 それに対し翔次は特に否定もせず疑問の様子もない為、何か心当たりはあるようだった。 大護は暫く二人のやり取りを見守っていると、二人は激しい鍔迫り合いから大きく背後へ退き、一旦間を置く。 「…虹平、その力は一体…?」 「気付いたか、流石だな…」
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