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翔次も大護も、真っ先に同じ疑問が脳裏を過った。
しかしそれを直接問うよりも先に、虹平は不敵に笑みを浮かべながら口を開く。
「火渡翔次…貴方は俺に、色んなものをくれた大恩人だ」
「だったら、なんでこんな事を!」
そんな虹平に対し、大護は我慢しきれずに思わず声を張った。
そして虹平はそれに答えるように、また小さく口を開く。
「だけど…それ以上に"大切なモノ"を奪われた」
「………」
「何モノにも替え難い大切なモノだ。だから俺は貴方に復讐したい…」
それに対し翔次は静かに目を閉じ、長くフーッと息を吐いて呼吸を整え、口を開いた。
「…言いたい事はそれだけか…?」
その瞬間、二人は一瞬にして共に抜いた刀でぶつかり合った。
「意外だった…?」
「……!」
「他の弟子達は皆師に忠実なのに、俺だけがこうして貴方に歯向かってさ」
それから二人は凄まじい攻防を繰り広げながら会話を交わし、一方で大護は何も出来ない。
そして何よりわからないのは、翔次は虹平から何を奪ってしまったのか…。
それに対し翔次は特に否定もせず疑問の様子もない為、何か心当たりはあるようだった。
大護は暫く二人のやり取りを見守っていると、二人は激しい鍔迫り合いから大きく背後へ退き、一旦間を置く。
「…虹平、その力は一体…?」
「気付いたか、流石だな…」
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