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すると翔次はすぐにその場を後にしてしまった。
大護は意味がわからないまま戸惑いを隠せず、すぐに引き止めようとするが、
「止めなくていい。今のは二人にしかわからない"会話"だ、多分修も納得してる…」
まるでそれを代弁するかのように裕紀は口を開く。
それでも大護は聞く耳持たず、翔次を追った。
「…ったく」
大護は暫く翔次を探し回るが、見つからない。
それでも探し続けていると、漸く部屋の奥で机に向かう翔次の背中を見付けた。
「親父!」
よく見ると、翔次は日記を書いているようだった。
「こんな時に何やってんだよ!母さんが!」
「…ガタガタ騒ぐな、こんな時だからだ…」
「でも……!!」
ふと気付くと、脇の本棚には大量の日記が並べられていた。
その八割以上が修の直筆で、自身の時代にもあったものだと気付く。
そして残りの二割は、翔次が書いたもののようだった。
それらの内容は、大護には見なくてもわかった。
既に並べられた日記には、これまで培ってきた料理のレシピ、そして今書いているのはおそらく、鬼殺羅流の流派だと予測出来る。
いつの間にか大護はその場で腰が落ち、暫く翔次の背を見守るように眺めていた。
その逞しい背中は、何故かかなり遠くにいるように感じた。
そんな大護に対し翔次は、振り向かないまま静かに重い口を開く。
「…生まれてくるガキは男か、女か…?」
「え…?」
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