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それから数時間と時が流れた。
いつの間にか空には夕焼けも徐々に暗くなって月が見え、しかしそれでも幻妖の数は一向に減らない。
翔次も大護も徐々に体力の限界を感じ始める中、
「……そろそろ潮時か……」
遂に痺れを切らしたのか、翔次は奥の手とでも言うべき"冥土の葉炎"を刀身に纏う。
一方で大護は、激しく息を乱しながら途切れ途切れに口を開き、翔次に語り掛けた。
「正直言って…ずっとあんたが嫌いだった」
「……」
それに対し翔次は、無言のまま耳を傾ける。
「だけど…今日初めて思った」
「……」
「あんたの息子で、良かった!」
「………そうか」
そう言い終えるが先か、大護はニッと笑みながら、遂に力尽きたのかその場で崩れ落ちた。
翔次は咄嗟に左腕でそれを抱えるが、それを見越して四方の幻妖は一斉に飛び掛かってくる。
「…くっ…!」
するとその瞬間、
「ド阿呆が…砲撃(キャノン)!」
突然そこへ姿を現した煥が、飛び掛かってきた数体の幻妖を纏めて吹き飛ばした。
大護は朦朧とする意識の中で徐々に視界が霞むが、辛うじて煥の姿は目に入る。
そんな煥に対し、翔次は問うように口を開いた。
「裕紀か……?」
しかしそれに対し煥は答えを返さず、無言のまま大護を抱えて翔次に背を向ける。
そんな煥に向け、翔次はまた声を掛けた。
「……お前に託して正解だったようだ……」
「………」
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