~第参拾玖幕~

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「やっぱり、あんたが春日裕紀だったんだな…」 「……」 大護はストレートに尋ねた。 しかしそれに対し煥は不意に顔をしかめ、暫く沈黙する。 「あの時俺は何も護れなかった…あの日、春日裕紀は死んだんだ……」 漸く口にした言葉に対し大護は、返す言葉が見つからなかった。 そして煥は、静かに自身の右半身を覆う包帯を捲り、その中を大護に見せる。 「…ッ!!」 その中は、夥しい大火傷を負っていた。 大護は思わず絶句するが、しかしその原因は何故か知っていた。 『うわぁぁぁぁ!!』 『どうしたんだよ大護!』 あの時煥は…かつて裕紀だった男は、泣き叫ぶ大護を必死に宥めるが、どうしようも出来なかった。 更にその時、 「ッ!!大護!!」 突然大護は久神に覚醒し、全身から凄まじい業火を放出する。 近くには修もいる為、裕紀は咄嗟に右腕で大護を抱え込むようにして覆うが、あまりの業火により抑えきれない。 それでも裕紀は強引に大護を抱え込み、右腕を中心に右半身は重傷だった。 右目は失明し、右腕は不随になる。 翔次が息を引き取った時、裕紀は翔次が額に巻いていた手拭いを自身の額に巻いた。 そしてそれは、今でも形見として身に付け続けている。 「親父……」 大護の脳裏には様々な感情が交錯した。 父の偉大さ、その父を嫌っていた自責、煥を傷つけてしまった罪悪感、改めて妹を護らなければならないという使命感…
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