~第参拾玖幕~

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「そう言えば…もう一つ、話し忘れている事があったな」 「え…?」 煥はゆっくりと立ち上がりながら、ふと思い出した事を話し始める。 それに対し大護も漸く自由になり、起き上がって胡座を掻きながら耳を傾けた。 「お前が出会った数日前になるが、翔次には密かにもう一つ、お前達に遺そうとしていたモノがあった」 「俺達に…?」 大護は一瞬の間に思考を巡らせるが、パッと出てこず、煥は構わず続ける。 「それは、翔次の師だった同族殺しの幻妖が後世に遺したモノを、見様見真似で自身もやってみたといったところか…」 「……!」 相変わらずほんの一言から来る情報量から大護は思わず混乱し、翔次にも師がいた事にも驚きはしたが、更にそれが幻妖で、しかも同族殺しだと言うから理解が追い付くのに少し時間が掛かった。 一方で煥は構わず続ける。 「かつて翔次の師で同族殺しだった幻妖の名は"切羅丸"。俺も直接会った事はないが、その男は、後世の者が幻妖に抗するべく五つの刀を鍛えた」 「それってもしかして…」 「そうだ、今はその一つを明が携えてる。"キサツラ"だ」 「……!」 「そしてかつては、俺もその一つである"バサラ"を愛用していた」 煥は続けた。 元々は四つの刀のキサツラとバサラ、そしてキマイラとカグラは総じて"四羅"と呼ばれ、後にその五つ目であるガイアラも存在が発覚したという。
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