~第壱幕~

5/11
前へ
/609ページ
次へ
少女の名前は"緑川深雪"、二号室の住人だった。 因みに、大護は五号室に住んでいる。 「さっき一緒にいた可愛い娘はだれ~?大兄も隅に置けないないなぁ、このこの!」 深雪は、からかうように大護の脇腹を肘で突々くと、 「アレは妹の桜だよ、前に話してなかったっけ?」 大護はそれを軽く払い、少し声を張ってそう返した。 「へー妹、てことは私と同い年か。それじゃいっぱい仲良くして貰わないとね、そんじゃね!」 「おい!」 深雪は一方的に話し終えると、すぐに大きく手を振るいながら走り去っていった。 大護は思わずハーッと長く息を零すと、 「さて、行くか」 すぐに気を取り直し、自身の教室へと向かった。 新しいクラスを確認し、指定された自身の席を見付けて腰を下ろすと、 「なぁなぁ聞いたか、転校生だってよ!」 「マジで、男?女?」 新しいクラスメートの連中は、今日から来るらしい転校生の話題で持ちきりだった。 特に興味の無かった大護は、ぼんやりとした表情で窓の外の遠い所に目をやりながら、何も考えずにただボーッとしていた。 すると、 「ほーら席に着いた、お前達の新しい担任の井上先生だぞ!」 「……!」 新しい担任の教師が教卓に立ち、手を叩きながら皆に呼び掛ける。 「石川ーっ!」 「飯田ーっ!」 「伊集院ーっ!」 「"井上"だって言ってんだろ!!」
/609ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加