~第壱幕~

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それから、今日は新入生を迎える入学式という事でクラス全員が体育館へと向かい、順に席に着く。 その中で大護は、こういった行事やイベントは苦手で何度か欠伸を掻きながら退屈を持て余していた。 目前に並ぶ新入生の中で桜の姿を見付けると、とりあえずは軽く手を振るが、すぐにまたいつものように遠くを見詰めながらボーッとする。 それから数時間、長く感じた式も漸く終わり、後の終礼も終えて解散すると、大護は鞄を担いですぐに教室を後にした。 そして校門を潜ろうとすると、 「あ、大護ーっ!」 「……!」 大護の名を呼ぶ桜の声が聞こえ、すぐに振り返ると、 「いたいた、やっと見つけたよぉ!」 桜はすぐに大護の元へ駆け寄ってき、 「一緒に帰ろ!」 「おう」 満面の笑顔でニコッと首を傾ける。 その帰り道でも、二人は何でもない会話で盛り上がっていた。 「でさ、うちのクラスにきた転校生が、何の特徴も無い陰の薄そうな奴でさ…」 「へぇ、それでそれで!」 そんな会話の中、ふと話題は変わり、今は亡き二人の親の話になった。 「お父さんもお母さんも、どんな人だったのかなーって思った事は今までに何回もあるよ」 「……あぁ」 「お母さんの妹さんには、私は母親似であの娘は父親似なんだって。双子なのにねー!」 「……」 しかし何故か、いつの間にか大護は浮かない顔をしていた。
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