彼女

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「何ですか?」 目を逸らさない彼女に対し俺は先に目を逸らし答える。 「お前は何でここに来るんだよ?」 ずっと聞きたかったことを聞く俺。 昨日は失礼なこと言っちゃたし。 彼女はその問いに少し考える素振りをし 「……っていうかお前じゃないですよ私?」 まったく関係ないことを言ってきた。 「なに言って──」 「一ノ瀬 雪です」 「…中村 千歳です」 急な話の展開──自己紹介に何とかついていく俺。 「私もよく分かんないです」 「あぁ?」 「何で今ここにいるか」 海を眺めながら最初の問いに答える彼女もとい一ノ瀬。 「…そか」 短く答え2人して黙って海を眺める。 数分経った時、彼女は立ち上がり鞄を拾いあげ 「それじゃ私、帰ります。さようなら“中村”さん」 「…じゃあな“一ノ瀬”」 何処までもマイペースに、今日知った名前で別れを告げた。
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