君に触れた瞬間

2/16
前へ
/16ページ
次へ
小さく息を吐きパソコンの画面から視線を外した。 そのまま斜め前へ視線を移せば、本棚の前で自分が頼んだ資料本を黙々と探す彼女がいる。 (見当たらないのか?) 微動だにしない後ろ姿に声を掛けようとして、だが、何となくやめた。 相変わらず細いシルエットだな……。沈黙の中、しばらくぼんやりと見つめる。 不思議なものだ。 他の女生徒達の顔は、誰も似たり寄ったり同じに見えるのだが(名前と顔を一致させるのがこれまた一苦労) 何故か彼女だけは違い、こうして後ろを向いていてもその表情が手に取る様に分かる。 多分今は……眉根を寄せ下唇をそっと噛んでいるのだろう。考え込んでいる時と困っている時は、大抵そんな表情で無言になるのがパターンなのだ。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加