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「食事まで頂くつもりはなかったのですが、ありがとうございます」
「私は人とお食事するのが大好きなの。誰かとお話しながら頂くお料理は、たとえ冷めていても温かく感じるのよ」
「? それではアイスなんかは溶けてしまいますね」
「ぶふっ」
あれ、誰だいま笑ったの。声のした方に振り向くと、そこにはうつ向いて肩を震わせるメイドが一人。
お ま え か。
「ふふ、面白い方ねマスターさん」
「はあ……」
アルネル学園長も笑っていたようだ。なんでだ。意味分からん。なんとなく恥ずかしくて紅茶を一気飲みしたところで料理が運ばれてくる。
フルコースとかやば。どんだけ贅沢なんだよ。もうなんか味とかどうでも良くなってきたよ。見た目だけで満足だよ。
「お口に合うかしら?」
「勿論です。流石は一流シェフですね」
「おかわりも遠慮なく言ってね。男の子はたくさん食べる時期だもの」
アウトぉおお!! それちょっとアウトなんじゃないかな学園長おおおお!! 男の子とか言っちゃらめぇええ!
内心ハラハラしながらメイドたちの方を見るが、さっきまで笑っていた子も全員ポーカーフェイスで目を伏していた。ここでの話が他言されることはない。メイド・執事等の教育は目ん玉飛び出るほど徹底したものだ。
数十分で食べ終え、ナプキンで口元を拭う。食器が下げられ食後の紅茶が入った所でアルネル学園長が話題を持ち上げた。
「それで、お話というのは?」
「エルラドのことです」
「あら」
柔らかい表情だったアルネル学園長が少し肩を強張らせる。それを解してやるように、俺は笑った。
「結論から言うと、アーサーはエルラドに関して何も行う気はありません。明日の実習も問題なく行えるはずです」
そう言うとアルネル学園長の表情が明らかに明るくなる。
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