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「そう。……良かったわ、本当に」
にっこり笑って口元に手を当てる。だがすぐに我に返り、細められた瞳で真っ直ぐ俺を見つめるアルネル学園長。
「本当にありがとう。何も出来なくてごめんなさい」
「いえ、貴女は動かずにいて正解でした。彼……エルラドはアーサーの弟ではありません」
「まあ、そうだったの。…………えっ!?」
珍しくアルネル学園長の目が見開かれる。何それ可愛いな。
「弟という肩書きはあったようですが、かなり昔に勘当された身であるようで。今頃はアーサーが直々にエルラドの所へ向かっている頃かと思います」
「そ、そうだったの。では授業への協力を口利きしてくれたというのは……」
「出任せでしょうね。アーサーは、ただ純粋に協力しようと思っただけだと思いますよ」
「そう」
なんか疲れたな。精神的に。俺老けちゃうよ。
結局三十分ほど雑談し、ちゃっかりデザートまで頂いてから城を後にした。嘘ついてまで晩御飯を頂戴したアーサーの気持ちが分かった気がした。何も言わなくても美味しいご飯が運ばれてくるとか最高の幸せだよね。
でもまだ帰れない。任務が残ってるからな! 畜生眠いぜ!
心の叫びをぐっと堪え、俺は現場に転移した。
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