3,顔を出した非日常

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「あー、任務かあ。そうだなあ。なんか簡単そうなやつをいくつか弾いておいたから、グループごとに好きなの選べや」 「やる気あんのかよお前」 思わず本音を呟く。幸い誰にも聞こえていなかったみたいだ。アーサーの適当さに若干ざわめくも、例のごとく順応の早い皆は楽しげに任務を選び出していた。 「さて、あたしたちはどうする?」 「早く行かないといいやつ取られちゃうよっ」 「ええ!? そ、それはまずいですね!」 両頬に手を当ててティリーが慌てる。そんなティリーをアークが制した。 「慌てるな。もう選んできた」 「いつの間に!?」 俺でも気付かなかったぞ! なんだこいつスゴ! 人差し指と中指で挟まれた一枚の紙。エリがそれを奪い取り、セリスとティリーが左右から覗き込む。 「おいアーク、なに選んだんだ?」 「フィアにぴったりの任務だ」 「は?」 エリ達に混じって紙を見た。数秒紙を見つめ、目線を外してアークを見つめる。いやいやいや、なんでそんなに誇らしげなの。ていうかこれ…… 「アークてめえ!! なにがぴったりの任務だ!!」 「なに怒ってるんだ」 任務内容は『ミルクティ・ラビットの捕獲(十匹)』。俺の声に反応したのか、クラスのみんなが集まってくる。 「Gうっせえぞ」 「どうした?」 「Gグループは何の任務にしたの?」 Gグループとかやめてほんと!! お前らやっぱり俺のこと苛めてるだろう!! プルプル震える俺に気付きもせずに集まった皆が紙を見る。けど俺が怒った理由が分からないようで、全員不思議そうにしていた。 まあ、あれだ。俺がこの任務嫌がる理由は聖白のやつらくらいしか分かんないだろうからな。 「なにそんなに嫌がってるのよあんた。ミルクティ・ラビットっていったらあれでしょ? 大人しい兎でペットに人気だけど、なかなか姿を現さないから滅多にお目にかかれないっていう魔獣の……」 「すっごい可愛いんでしょ? 僕、本物は見たことないや」 「可愛いけど、俺は苦手なんだよ。とにかく依頼は違うやつに変え……」 「フィアさん、この任務嫌なんですか? 私、一度でいいから抱っこしてみたくて。あ、ごめんなさい。私無神経なことを……」 「おーし早く出発しようぜ! なに、ミルクティ・ラビットだっけ? やっべ超余裕!」 みんなの視線が痛い。なんとでも言え。男は見栄を張る生き物なのさ。
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