3,顔を出した非日常

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「い、いいんですか!? フィアさんありがとうございます!」 「じゃあ決定ね。報告しましょ」 「いや、その必要はねえぞー」 エリの背後で発せられた間延びした声。振り向いたそこにはアーサーがいた。 「お前らに付き添うのは俺だ。なになに、ミルクティ・ラビット? ぶふッ」 顔を背けて噴出す。こいつも、俺がこの任務嫌がる理由知ってるから。でもそんな咳で誤魔化そうとしても駄目だから。あとで絶対ぶん殴ってやる。 場所はエドラの森。一通り注意事項やら約束事を説明されてから、アーサーの魔力で全員一気に転移する。 瞬き一つしている間に森に着き、俺とアーク以外の三人は目をぱちくりさせていた。 「うわああ! 私、転移って始めてです!!」 「あたしもよ。凄いわね」 「僕は父さんの魔力でしたことあったけど、五人もいっぺんにできるなんて! やっぱりレベルが違うんだねえ」 キョロキョロと辺りを見回している。ミルクティ・ラビットは洞穴とかに住んでるんだけど、その入り口は草とかで巧妙に隠しているから見つけにくい。てか見つかんない。授業でもやるしそれは皆知ってるようで、雑談しながら辺りを探し始めた。けど動かないアークと俺。 「ちょっと二人とも。真面目に探しなさい。日が暮れちゃうじゃない」 「いや、探さなくて大丈夫だ」 アークがちらりと俺を見る。見んなし。 「どういうこと~? フィア探すの得意なの?」 「もったいぶらないでさっさとやりなさい」 やだな。マジやだ。しかし突き刺さるみんなの視線。アーサーまで。 こうなったら仕方ない。 漢の中の漢、フィア。行きます!! 「おし、やるか! お前ら俺から離れてるんだぞ」 「おいみんな、行くぞ」 腕まくりをして意気込む俺一人を残し、数メートル後ろの木の幹に身を隠すみんな。それを確認して、俺はその場に座った。土やら枯葉やらくっつくけど気にしない。けどそれだけ。 それ以外は何もせず、目をつむってひたすらじっとする。背後のみんなが固唾を飲んで見守るなか十分ほど経っただろうか。俺の右斜め前にある木の根元の草陰から、ぴょこっと耳が飛び出た。 「ああ! ミルクティもがが」 セリスめ。アークに口を塞がれたな。
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