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草の間からこんにちわした耳がピコピコ動き、そのうち手のひらに乗ってしまうほど小さなラビットが草影から飛び出してきた。超ちっさいけどこれが成獣サイズです。
ちなみに、毛の色がミルクティ色だからミルクティ・ラビットね。超適当。
「おいで」
ラビットと目が合ったので、優しく声をかける。鼻をしきりに動かしながら俺との距離を縮め、最終的にあぐらをかいた俺の膝に乗った。
めっちゃ可愛い。
冗談抜きで可愛い。
これだけで済めばな!!
こっからが俺の苦手な所。一匹が俺の膝に乗った瞬間にわらわら現れるラビットの群れ。ミルクティ・ラビットは基本的に鳴かないので、無言で集まってくるその様子とか恐いんだよ。
「うわ、ちょ、集まりすぎ……うぷ」
しまいには顔にまでへばりついてくる。引き剥がそうと首根っこ掴むが、離れたがらないラビットの爪が鼻の穴に引っかかった。
「いででででで!! いったいよお前! あ、こら! ボタンを噛むんじゃない!」
隙あらば服の中に入ろうとしてみたり、顔に体当たりしてきたり、髪にじゃれてみたり……って髪はやめて! 偽りの茶髪がバレたらどうすんだお前ら!
「いつ見ても凄いな、フィア」
「アークか! 助け……いてえ! ちょ、いま誰か俺の【ピー】を噛みやがったな!! 出て来いコラ!!」
目の前ラビットまみれ。なんかもう、こいつらただの毛玉に見えてきたよ。それにしても引き剥がしたいのに爪が折れそうで引っ張れない。振り払いたいのにすぐ死んじゃいそうで振り払えない。黙ってれば増えていく。加えて暑い。獣臭い。しまいには俺の【ピー】を噛みやがる。
だからやなんだよ!
いくら可愛くても一匹で十分だよ!
アーサーが笑いながら木の陰から出てきたのに続き、みんなも恐る恐る俺に近寄ってくる。ラビットは一瞬警戒を見せるも、逃げていくことは無かった。
「フィアなにそれ! すっごく可愛いことになってるよ!」
「そう思うなら変わってくれセリス」
「あ、あの~。野生のミルクティ・ラビットって警戒心が強くて、自分から寄ってくるなんてありえないんじゃ……」
「そうだ。だけどどうしてか、フィアは小動物系に好かれてしまうらしい」
アークの言葉の最後らへんは聞こえなかった。何故って? 肩に乗ったラビットが俺の耳に体をくっつけてるからさ! 超邪魔! そして痒い! 痒くて死にそう!
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