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総勢六十五名の隊員と、三名の幹部。だだっ広いその訓練所内で二人一組になり戦う。その様子を三人の幹部が周りながら見定め、しごくのだ。
その訓練所の一番奥に、腕を組んでただ佇む青年が一人。耳に少しかかる程度の深い蒼色の髪と紫紺の瞳が特徴的だ。
彼はなにも言わず、ただ黙って隊員たちの戦いを見つめている。その出で立ちはどこか儚げで、しかし有無を言わせぬ強い気迫があった。
だが彼が着ているのはこの場には違和感を覚える真っ白のローブ。上質で品のあるそれには金糸で百合をモチーフにした紋章が刺繍され、そしてそれはギルドの頂点に立つ証であった。
そう。彼こそが『孤高の制裁者』と呼ばれるギルドマスター。
その時、彼はちらりと隅の掛け時計に目をやり、時間を確認して大きく息を吸った。
「休憩だぁああテメエら!!!」
「うおっしゃああ!!!」
静かで儚いその見た目とは大違いの、馬鹿でかい声が訓練所を木霊する。その声を聞き、今まで一心不乱に集中していた隊員達が歓喜の声を上げた。
そんな隊員たちとは裏腹に、呆れたような表情を浮かべる幹部三人。
隊員たちと彼等はぞろぞろとギルドマスターの前へ集まっていく。
「ちょっとマスター! また休憩!? 訓練になんないじゃない!」
「同感ですね。持久力も鍛えたいところなのに」
「おい二人とも。マスターに口答えとはどういうことだ」
一番に悪態ついたのはブロンドの髪を二つに緩く三つ編みし、赤いカチューシャをはめた童顔の女。次に鮮やかな緑の髪を後ろでちょこんとしっぽ縛りにした男。そして唯一マスターを庇ったのは、少し暗めの金の短髪を逆立て鋭い目を光らせる青年だった。
「んなことどうでもいいんだよ。ちょっとお前らに提案があるんだけど、聞いてくんね?」
「なによ。また下らないことだったらぶん殴るわよマスター」
「下らなくねえよ! いいか、よく聞け!!」
幹部三人も、六十五名の隊員も全員が見守るなかでギルドマスターである蒼髪の彼はにやりと笑い、八重歯が光った。
「俺、学園に通いたい!」
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