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「あ! そういうえばマスターにお土産買って来たんすよ~。でも俺、良く考えたらマスターの好みとか全然知らなくって。何買おうか九日くらいずっと悩んじゃって……」
「謹慎期間ほぼ費やしてんじゃねえか」
「ひとつでも気に入るものがあればいいんですけど……。はい、どうぞ!!」
何処から取り出したのか、ロイ二人分くらいありそうな巨大な袋を俺の前に置き、それを逆さにして満面の笑みで中身をぶちまけるロイ。無言で見守る俺とアークの視線の先で、雑貨やら食いもんやら装飾品やらがドサドサ積み上げられていく。
「結局思いつかなかったんで、店のもの全部買い占めてきました!!」
「…………」
「あれっ? どうしました? 選んでくださいマスター! なんなら全部どうぞ! 俺的にはこのピヨピヨ饅頭とかワンワン茶漬けなんかがお勧めで……ってどうしたんですかマスター!? なんで泣いてんすか!?」
「もうやだ。お前超怖ぇ……」
「うわわわわ! すいませんマスター! ああっ、でも泣いてる顔も結構……」
「おい。まずそれを片付けろ。俺の部屋だぞ」
アークが目を細めてこめかみを痙攣させている。こっちも怖ぇ。なんだこれ。どういう状況だ。
「ていうかお前、俺のこと嫌いなんじゃなかったのかよ。もしかして目のことで気ぃ使ってる? マジでそういうのいいから……」
「違います!! 俺、目が覚めたんです!!」
「はい?」
「マスターの格好良さ! 優しさ! 器の大きさ! 前までの俺はそれに嫉妬していただけなんだ、と! なんて愚かだったんだ俺は! 死ねばいいのに!」
「ちょ……おまっ、少し落ち着いて……」
「そう!! マスターに兼ね備えられた見果てぬ強さ! 素晴らしさ! それを悟った俺は……俺はッ!!」
そこまで言って、パッとロイが真顔になる。眉間にしわを寄せ、なんとも凛々しい表情で……
「覚醒しました」
「お前が覚醒すんのかよ!!」
おそらく青白くなっているだろう顔に引き攣った笑みを浮かべ、俺は必死にロイから後退る。そうしてだれかこの状況を打破してくれる救世主はいないかと心の叫びを響かせた時だった。
「アー君! いるー?」
神様が舞い降られました。
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