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「お、俺たちだって最初は信じてなかったよ! だから獣人じゃない証拠を見つけようと思って追っかけただけなんだ。でも……」
「あったのよ、獣人の証!」
クラスの皆が段々と騒ぎ出す。
「耳が生えてたんだもん! 間違いないよ!」
「これだよ! このヘアゴムが魔法道具で、普段は隠してたんだ!」
「熊の耳だったわ!」
「熊って……マッドべアーとかじゃね?」
「はあ!? あの肉食の!?」
なんか煩いけど、全部無視して人ごみを掻きわける。途中、モモちゃんのヘアゴムを見せてきた男を突き飛ばして無理やり奪い取り、モモちゃんの隣にしゃがんだ。
頭を抱えてうずくまってるモモちゃん。必死に庇った両手の隙間から、獣の耳が少しだけ見えている。
「フィア……どうしよう」
「フィ、フィアさん……」
不安そうなセリスと、涙目で俺を見上げるティリー。二人が少しだけモモちゃんから離れ、その隙に俺はモモちゃんの手をどかした。茶色い小さな耳が露わになって抵抗するモモちゃん。申し訳ないけど、俺はその手を無理やり抑えつけて髪を縛ってやる。
昔何人かにやってやってたから、ちょっとだけ得意なゆるい三つ編み。手櫛で整えながら結い、ゴムで止めた途端に耳が消えた。呆気にとられるモモちゃんの額の血を拭いて、頭を撫でる。
「おはよ、モモちゃん」
そう笑いかければ、モモちゃんの瞳に一気に涙があふれ出し、ボロボロとこぼれた。
「う……ぁ、っ、うわああああああああん!」
顔を隠しもせずに泣き叫ぶモモちゃん。そんなモモちゃんを、ティリーが必死に抱きしめる。 だけどクラスの皆は、そんなモモちゃんと俺達を冷ややかな瞳で見つめていた。
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