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一方で、わりと圧倒的だったガディアを気に入ったらしい観客からの歓声も湧き、汗を拭いながらそいつらに手を振るガディア。そのまま退場するのかと思ったけど、くるりと振り返ったガディアは倒れたままのエルダ君に近付いた。
倒れてはいるものの意識は取り戻しているっぽい。疲労しきった表情で空を仰ぐエルダ君に、ガディアは手を差し伸べる。
「カッケェ武器だな! お前の盾!」
「……え?」
「超楽しかったわ! またやろうぜ!」
見ているこっちが眩しさを感じるほど爽やかに笑うガディア。エルダ君はしばらく呆然としていたけど、呆れたように吹き出す。
「楽しかったっていうほど白熱しなかったろ?」
「そうか? 俺は結構熱かったぜ!」
「うん、そうだね。確かにね」
笑いながらガディアの手を取ったエルダ君が立ち上がる。そのまま握手を交わし、なんのしがらみも無い笑顔を向けた。
「次は負けないからな!」
「次も負けねえよ!」
そんな好敵手らしいやり取りを繰り広げる二人。観客も和みムードになり、微笑ましい拍手と共に二人が退場していく。
なんだろう……うん。なんだろ。分かってたんだけどさ。なんか……
「めっっっちゃ良い奴かよガディア!!」
思わず叫んでしまいました。いやだってさ! あんなパーフェクトに爽やかなやつ居た!? いやいなかった! 相手まで爽やかにさせる圧倒的太陽属性! こわい!
「え〜〜そう? 僕的にはああいう人ほど腹黒かったりするんじゃないかと思っちゃうけどなあ」
「お前じゃあるまいし」
「ん? フィア何か言った〜?」
やべ、聞かれてた。セリスさんも怖い。いや基本的には良いやつなの知ってるけどね。怒らせたら怖いもんな。なんて……こんなこと考えてる自体、現実逃避なんだってことは分かってる。だってとうとうこの時が来てしまったから。
「ちょっとティリー。大丈夫?」
「は、は、はい……だいじょ、うぶ、です、エリちゃん……」
次はいよいよ、ティリーの試合だ。
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