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フィアさん、エリちゃん、アークさんやセリス君にも応援してもらって、必死に自分を奮い立たせながらたどり着いたステージ上。
きちんと心の準備はしたはずなのに緊張が収まらない。手の震えが止まらなくて、バロック先生に渡された鏡を胸に取り付けることすら難しかった。その理由のひとつは多分、ニコニコと私を見つめるルウナスさんで。私はステージに上がった時に会釈をしたきり目を合わせることも出来なかった。
この人は怖い。全てを見透かされているみたいだから。
「おし。そんじゃあルウナス・ゼレッタvsティリー・フォール、開始!!」
一向に思考がまとまらない中で鼓膜に響いたバロック先生の号令。なんの準備もしていなかった私は慌てるけど、ルウナスさんは背中の後ろで手を組んで相変わらず笑っているだけ。
「えっへへー! ついに本戦ですねっ、ティリーさん!」
「へ!? あ、ははははい! よ、よろ、よろしくお願いします!」
とてもフレンドリーに話しかけてくれたのに沢山噛んでしまった。思わず頭を下げ、それからチラリと見上げてみれば、相変わらず笑顔のルウナスさんは細めた瞳で私を見下ろす。
「あのですねー、私ですねー、色々知っちゃってるんです!」
「い、色々……?」
「ええ! 聞いたところによると貴女、昔のトラウマで練習をサボりまくって、ランク落ちしちゃったらしいじゃないですかー」
あまりに簡潔に事実を述べられドキッとする。うまく返答することが出来ない。どうしたら良いのかも分からず目を逸らす私。
「舐めてんですか?」
そんなわたしに、ルウナスさんは冷めきった眼差しを向けた。
「ち、違います! 私は……」
「じゃあ甘えてんですね」
否定してしまったのは勢いだった。反射的に、無意識に。けれどルウナスさんのハッキリとした口調に阻まれ、たいして意味の無かった私の否定は喉の奥底に飲み込まれる。
「そうやって舐めくさった態度でいるくせに、ちょっと顔が良いからって優秀なお仲間さん達に庇われ、甘やかされて……。良いご身分ってもんですよ!」
「……ッ」
「あ、そうそう。あなたGランクの人とも仲良いらしいじゃないですか!」
不意に出たフィアさんの話題に心がかき乱されたのが分かった。何を言うのか、何を言われるのかと不安がこみ上げる。ずっと直視することの出来なかったルウナスさんを真っ直ぐ見つめると、可愛らしい笑顔で頬に両手を添えた。
「私、すっごく応援してるんですよ! 弱いもの同士仲良く傷を舐め合って、お似合いの二人じゃないですかぁ〜」
そう言って頬を染めるルウナスさん。
いくら私が馬鹿でも分かる。この人は心から私のことが嫌いなんだ。
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