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案の定というか、教室内はさらに静かだった。
大人しく席に腰掛けて、皆なあんにも言わず。
どことなく息のつまる、重苦しい空気の漂う中、がらんと開いたドアによって静寂が破られた。
ほう、と思わず息を吐く。
扉を開けたのは担任と思しきスーツ姿の男性だった。
「おー、静かだ」
けらけらと暢気に笑い声を上げる男。
まあ、入学式は大体こんなもんなんだろう。
ゆったりとした足取りで男は教壇まで歩む。
穏やかな微笑を浮かべる彼は教師にしては若い。新任だろうか。
「1年4組の担任を務めることになった、城嶋 誠だ」
はきはきとした口調で喋る彼は、城嶋というらしい。
それから城嶋先生はしばらく自己紹介やら学校の説明やらを数分語り、プリントを配り始めた。
「自己紹介カードだ。もうすぐ体育館に行かないといけないから、教室に帰ってきてから書くように」
高校にもなって自己紹介カードって。
面倒だなと思いつつまわってきたプリントを後ろにまわす。
そしてふらりと振り返ると、そこには見覚えのある好青年がこちらを見ていた。
思わず、プリントが手から零れそうになる。
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