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「え、ええ!?な、なな中澤……!?」
「おう、田宮じゃん。そういや海高っつってたな」
こちらの気など露も知らぬ中澤はけらりと笑った。
田宮、と。さり気なくあたしの名を口にした彼にどきりと心臓が喚いた。
苗字呼ばれただけでこの有様とは、まったく我ながらに呆れる。
ちなみに海高とは、海星学園の通称のようなものだ。
「中澤……受験会場いたっけ?」
中澤 悠。
同じ中学校だったクラスメイト。
彼は確か、超難関進学校を志望していたんじゃ……?
「ああ、いたぞ」
うっそおおおお!?
プリントを後ろにまわしながらあっけらかんと言い放つ彼に驚きが隠せない。
「にしても田宮いて安心したわー。このクラス、同じ中学のヤツ誰もいねえかと思ってちょっと寂しかったんだよ」
にこやかに話す彼にあたしも笑顔を浮かべるが、内心はショックで正直泣きたいくらいだった。
中澤は──あたしが初めて恋をした相手で。
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