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彼女は他人を嫌った。
きっと僕と同じ理由だろう。
他人といるのを恐がっている。
しかし、彼女も僕も互いに恐怖を感じていないだろう。
それがなぜかは分からないが。
今、目の前でスタスタと歩く彼女はそんな雰囲気を見せなかった。
普通の高校生だった。
「どこに向かっているの?」
僕が言うと彼女は指を指した。
「あそこよ」
彼女の白く長い指が指していたのは今はまだ木々で隠されている少し山を登ったところにある小さな廃工場だった。
五年前ぐらいに首吊り死体が見つかった場所だった。
「この町で廃墟と言ったらあそこしかないわ」
彼女のはいつもより少し小さな声でいった。
「この事件に関する何かでもあるの?」
彼女に合わせて小さな声で訊いた。
「いいえ、私の勘よ」
何か楽しそうだった。
彼女にもこんな顔できるんだ。
なぜか、一瞬彼女が遠く感じた。
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