右腕ミンチ事件

8/48
前へ
/82ページ
次へ
「聞こえてます?」 さっき廃工場から出てきた男はずっと夢野を見つめていた。 「似ている」 彼はぼそっと呟いた。 危険だ。 頭の中で警鐘が鳴る。 彼女をこれ以上見せたら殺される。 「失礼しました…」 逃げようとしたとき、彼は泣いていた。 「死んだ妹に似ているんだ」 彼は言った。 そうか、確か犯人はロングヘアーの女子高生を狙っている。 こいつだ。 犯人はこいつ。 どうやって帰る? このままだと殺される。 危険だ。 危険だ。 逃げろ。 いざ死が目の前にあると手が震える。 死に憧れていることも忘れるぐらいに。 「そうなの。よかったわね」 彼女が口を開いた。 「早く行かないと記事がまとめられないわ」 彼女が裏を向き歩きだした。 男は目の前で立ち尽くしていた。 こいつが犯人であろう。 でかい収穫だった。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加