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あの日は大雨で、かなり荒れた夜だった。
雷の光で一瞬明るくなった部屋に、俺の“お兄ちゃん”が倒れているのが見えた気がした。
俺は立ち尽くしていた。
見間違えだと…
幻だと思いたかった。
また雷が光った。
今度はさっきよりも長かった。
「お兄…ちゃん……?」
見間違いでも、幻でもなかった。
“お兄ちゃん”が血を流して、うつ伏せに倒れている…
倒れている?
……いや、あれは多分もう……
「あんたが…あんたが“お兄ちゃん”を殺したのか?」
血液が滴り落ちるナイフを片手に持った“あいつ”に、俺は震える声で聞いた。
「………」
しかし“あいつ”は応えようとしない。
ただ、冷えきった目を此方に向けて黙って立っていた。
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