Invitation

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   時は、神のようだ。  時だけは平等に、全ての人類に与えられるもの。  どう足掻こうと無駄にした時間は戻らず、どんなに涙を流しても感動した時間は返ってこない。  ――“だからね、アーラ。人は、一瞬を一生懸命生きるのですよ”  アーラの親代わりになってくれた神父様が、口癖のように言っていたことを今更になって思い出す。 「お支度、整いまして御座います」  いつもより丁寧な口調のヴァードが、恭しく頭を垂れて凛と放つ言葉。それに何より鞭打たれたように緊張が走ったのは、当のアーラ。 「参りましょう。アーラ様」  まるで口伝に聞いた王子様のようなウルラが、真っ白な燕尾服を着て膝をつき、同じく一点の曇りなき純白のドレスを身にまとったアーラへ手を差し伸べた。  その手を取れば、もう引き返せない。  光の溢れる、舞台へ。    一人のシスターが、拍手に包まれる――――
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