一章 ブラッドタイプL

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午前の授業の終了のチャイムが鳴る。 桐葉高等学校、屋上。 「おい、昶。午前の授業終わったぞ」 「ん……」 白風昶は、大きなあくびをしながら起き上る。 その隣に幼馴染で唯一の親友、辰巳音操が腰を下ろした。 昶は薄い茶色の癖毛をがしがしとかき、音操が差し出したパンを受け取った。 「午後は出ろよな」 音操は購買で買ってきた焼きそばパンをかじりながら、ぼそっと言う。 「えー。やだよ」 昶は、音操に向き直って言い返した。 音操はそれに苦笑いを浮かべる。 「即答かよ」 パンを食べ終わると、音操はビニール袋を手に立ち上がる。 「さて、そろそろ昼休みも終わるな。行くぞ、昶」 しかし、昶はむすっとしたままパンを食べていた。 親友は、ため息をつき、ヘッドフォンをつける。 昶はそれを無視してかじり続けていたが、いきなり制服の襟首を掴まれ、パンをのどに詰まらせた。 「――いきなり何すんだっ、音操!」 音操の拘束からなんとか逃れ、せき込みながら言った。 しかし当の幼馴染は、不敵に笑って、昶に背を向ける。 「さっさと来いよ」 ひらひらと手を振りながら、屋上の入り口に向かって歩き始めた。 彼の栗色の髪が風に揺れる。 音操の姿が校舎の中に消えたあと、昶はため息をつきながら立ち上がった。 「仕方ねえなぁ……」 言葉とは裏腹に一瞬嬉しそうに微笑み、ベルトのようなチョーカーをつけた首にさわりながら親友の後を追う。    ――☆――☆――☆――
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