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チャイムが鳴る。
「はーい、ここまで。宿題やってこいよー」
千原は、教材を手に教室を出て行った。
それと同時に昶はバッグを肩にかけ、音操に声をかけた。
「おーい、音操。行こうぜ」
音操も左肩にバッグをかけると、頷く。
「ああ」
それから、昶たちは五階の二年一組の教室を出る。
二人の部活はバスケットボール部だ。
体育館に続く渡り廊下を、彼らは並んで歩いている。
大きな体育館に入ると、バスケ部の部室に行き、着替える。
「集合ー!」
キャプテンの号令がかかり、続々と部員が集まってきた。
三年生のキャプテンと監督が中央に立つ。
「えー。今日もインターハイに向け、各自練習に励んでください」
キャプテンは一歩前に出て、胸を張って言った。
「はい」
総勢四十名強の部員たちが、声をそろえて返事をする。
「では解散!」
号令とともに、バスケ部の練習が始まった。
がやがやとした二年専用に区切られた部室で着替えた後、昶と音操は帰り道にいる。
「あー。早く帰って聞きたいな、コレ」
バッグを斜めにかけ、そこから取り出したCDを傾きかけた太陽にかざした。
CDケースが日の光をはじいて、キラキラと輝く。
「お前さ、おもちゃ買ってもらった子どみたいだな」
音操がそれを見て、笑った。
「うるせーな」
昶は即座に返したが、親友につられて笑いながら思う。
――ガッコウは退屈だけど、こいつといると楽しいんだよな。
しばらく二人はたわいもない話をしながら歩いていたが、音操がふいに足を止めた。
「ん? どうしたんだ、音操?」
昶も立ち止まり、彼の視線の先を見る。
そこには、学ランの上着をマントのようにはおり、なぜか細長い袋を背負っている同い年くらいの少年がいた。
「ほう。そいつがL(エル)か? そうは見えないが……。まあ、お前が言うからそうなんだろう。そうだろ、音操?」
親友はさも当然のように、会話を続ける。
「ああ。正真正銘、Lだ。というか、今来るか」
昶は、そのまま話を進めようとする二人の間に割って入った。
「ちょ、ちょっと待て。事情を説明しろ! どういうことだ? Lってなんだよ?」
昶と向き合った音操は、「うーん」と首筋に手を当て、少年の方に歩いて行く。
「まず、こいつは蓮杖吟。俺は血液を集めるのを手伝ってる」
吟は、固まっている昶に、親しげに手を振ってきた。
「血液……? どういうことだ」
訳が分からず、昶は首を振った。
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