一章 ブラッドタイプL

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吟は音操の肩に手を置き、真剣な顔で言う。 「俺と音操は、特殊な血液を持って生まれた人間、ストレンジ・ブラッドだ。そして、お前も」 昶は目を見張る。 「ストレンジ……ブラッド?」 助けを求めるように音操に目を向けると、親友はそっと目を閉じた。 「特殊な力を宿した血液。それを生まれ持った者はストレンジ・ブラッドと呼ばれ、ABO型以外の血液型のことをいう。まあ、隠された血液型って、俺たちは呼んでるけど」 彼は、力なく首を振る。 「意味わかんねェよ……。一体、なんなんだ……?」 言葉を見つけられず、迷っている音操を見かねて、吟が言った。 「あー、自覚してないのか。俺はブラッドタイプD、『死』の血液を。音操はブラッドタイプH『治癒』の血液を持ってる。んで、お前はブラッドタイプL『光』の血液を持ってるってわけだ」 吟は大股で昶のもとに来ると、顔を寄せてくる。 「はじまりの血液、L型なのはお前だけなんだ」 昶は後ずさり、目を見張った。 「はじまりの……?」 その時、重くのしかかるような感覚がする。 「なっ」 彼は、きょろきょろと周りを見回した。 しかし、音操と吟は二人して一点を見つめる。 昶もそちらを見、戦慄した。 そこには、空間をそのまま切り裂いたような黒い穴が開いていて、そこから漆黒のトカゲじみた生物が出てくる。 「な、なんだよあれ!」 生物が十数体出てきたところで、その穴から漆黒のローブのフードを深くかぶった人物が出てきた。 人物は、だらりと腕を下げたまま、静かにたたずんでいる。 「お前は誰だ」 吟は背負った袋から黒い刀を取り出し、即座に抜刀する。 ローブの人物から、絶えず重いプレッシャーが放たれている。 そのプレッシャーだけで、体が押しつぶされてしまいそうだ。 「光と闇の力を持つ者よ。我らともに来い」 人物は手を差し伸べ、言った。 「は……?」 昶は一歩後ずさる。 「行くわけないだろうが」 音操が目を細めて、静かに言う。 ローブの人物は、微かにうつむき、首を振ったように見えた。 「まったく、仕方ないか」 そして、差し出していた手をすっと横に振ると、トカゲのような生物が、わっと三人に群がってきた。 「う、わっ」
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