プロローグ

2/3
前へ
/4ページ
次へ
赤い。 夕暮れ、燃え盛る灼熱、憎悪に満ちた瞳、血、血、血。 とにかく、俺の景色はどこまでも醜い赤色に染まっていた。 つい数時間前まで平穏な日常の舞台だっな街並みは、もはや見る影もない。 どこからともなく現れた数えきれないほどの大軍によって、僅か数百人である俺たち“血の一族”は攻めたてられていた。 家という家は破壊され、燃やされ、辺り一面には死体が転がっている。 まさにそれは、地獄をそっくりそのまま持ってきたかのような光景だった。 ここは、町の中心部。 唯一まだ原型を留めている教会を最後の砦として、数十人の生き残りは身を寄せあっていた。 俺は十歳という幼さながら悟っていた。 間違いなく、ここで死ぬと。 あまりにも疑う余地のないことで、不思議と涙も震えも恐怖すらなかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加