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赤い。
夕暮れ、燃え盛る灼熱、憎悪に満ちた瞳、血、血、血。
とにかく、俺の景色はどこまでも醜い赤色に染まっていた。
つい数時間前まで平穏な日常の舞台だっな街並みは、もはや見る影もない。
どこからともなく現れた数えきれないほどの大軍によって、僅か数百人である俺たち“血の一族”は攻めたてられていた。
家という家は破壊され、燃やされ、辺り一面には死体が転がっている。
まさにそれは、地獄をそっくりそのまま持ってきたかのような光景だった。
ここは、町の中心部。
唯一まだ原型を留めている教会を最後の砦として、数十人の生き残りは身を寄せあっていた。
俺は十歳という幼さながら悟っていた。
間違いなく、ここで死ぬと。
あまりにも疑う余地のないことで、不思議と涙も震えも恐怖すらなかった。
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