1.境遇

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 別の部屋にできないんですか、と桜井はすぐさまそう担当の先生に尋ねた。  しかし、先生からは、それはできない、という至極当然の返事が返ってきた。  担当医や看護師の眼から見て、桜井はまるで子どものようにこの話を嫌がっているように聊かは見えただろう。  どんな患者が来ようが関係ない、桜井はその他人を拒むつもりだと、そう思っただろう。  話を聞いた後の桜井は終始不機嫌な顔をしていたが、嫌な空気を張り詰めた抵抗もむなしく、予定の日に、いよいよ別の病院から移動してきた患者は桜井の病室にやってきた。
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