1.境遇

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 小波は最初、初対面ということもあってか萎縮を見せていたが、一度会話を交わした後は首を傾げたり、不思議そうに桜井を眺めたりするばかり。  桜井のほうもどこか挙動に落ち着きがなく、この来訪者が放つ今までの病院関係者とは違う空気を感じているようだった。 「どうして怪我をしたの」 「どこの学校に通っていたの」 「家は。へぇ、下宿してるんですね。じゃあ実家は」  小波は看護師たちも毛嫌いする桜井に対して、物怖じなく質問を投げかけた。  桜井はその質問に、言葉に詰まりながらではあるが意外にも多くの返事を返した。  小波の言葉は桜井を困らせようとする意図があってのものではないし、何かの義務感に駆られて言ったものでもない。  それを桜井は感じていたらしく、彼女がまだ幼いことも相まってなのか、いつものように冷ややかに受け答えすることができないでいたのだ。
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