1.境遇

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 だが、桜井の態度は時間が経つにつれ本調子を取り戻したのか、回答はより短く簡潔に、そして声色はより嫌味に冷たくなっていった。  さらにしばらくした後、桜井はついに小波の言葉を無視し始めた。  桜井が無視を続けると、次第に小波の声は小さく、躊躇いの他に戸惑いも感じられるようになってきた。  桜井は彼女に背を向け、少し眉を寄せながら、きゅっと唇を噛んだ。 「あの」 「あのう」 「その……」 「あの……なんでも……ないです」  そして十数分ほどが過ぎたころ、とうとう小波が桜井に話しかけることはなくなった。  二人の間に幸先の悪い沈黙が立ち込め、二人はカーテンまで閉じてしまった。  桜井は自らが作ったにも関わらず、この空気の中で終始居心地の悪そうな顔をしていた。  気まずさと音のない不穏を胸に、夜は更ける。  桜井と小波、その初対面は、沈黙と険悪から始まった。
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