1人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、桜井の態度は時間が経つにつれ本調子を取り戻したのか、回答はより短く簡潔に、そして声色はより嫌味に冷たくなっていった。
さらにしばらくした後、桜井はついに小波の言葉を無視し始めた。
桜井が無視を続けると、次第に小波の声は小さく、躊躇いの他に戸惑いも感じられるようになってきた。
桜井は彼女に背を向け、少し眉を寄せながら、きゅっと唇を噛んだ。
「あの」
「あのう」
「その……」
「あの……なんでも……ないです」
そして十数分ほどが過ぎたころ、とうとう小波が桜井に話しかけることはなくなった。
二人の間に幸先の悪い沈黙が立ち込め、二人はカーテンまで閉じてしまった。
桜井は自らが作ったにも関わらず、この空気の中で終始居心地の悪そうな顔をしていた。
気まずさと音のない不穏を胸に、夜は更ける。
桜井と小波、その初対面は、沈黙と険悪から始まった。
最初のコメントを投稿しよう!