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しかし、盲目というハンディは桜井に一つの見落としを与えた。
この時、実は小波もまた目を覚ましており、桜井の行動をじっと観察するように見ていたのである。
小波は頬を枕につけて、腰まで届く長くしなやかな黒髪をベッドに寝かせたまま、じっと桜井を凝視していた。
就寝のときは閉じているはずのピンクのカーテンは小波から桜井が見える最低限の範囲で開いたままになっており、さもそれは看守小波が囚人桜井を監視するかのようだった。
新しい寝床に寝苦しさを感じたのか、それとも怪我の痛みが疼いたのか、小波は桜井より一時間近くも早く目を覚まし、カーテンをずらして窓を見る傍ら桜井を見ていた。
窓の外は真っ暗ではあったが、天井に備え付けられた蛍光灯が放つ今にも消えそうなほど淡い光がぼんやりと桜井の眠る後頭部の輪郭を浮かび上がらせていた。
小波はその姿をぼんやりとした眼で、じっと飽くことなく眺め続けていたのである。
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