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桜井の院内での生活は他人目にも退屈なものであった。
起床時刻からしばらくした後に質素な朝食が届き、例え桜井がどの食べ物が嫌いであろうと、事前にアレルギー検査を終えているその食事が彼の喉に通してもよいと心得ている看護師は、順々に彼の口へ食事を運んでいく。
プレート上にあるどの料理を取ったのかはその前に宣言してくれるが、看護師との距離感と妙な意地とかプライドのせいか、それは食べたくない、などと言い出すことはできなかった。
嫌いなものを無理に食べなければいけないその時間は、彼にとっては非常に苦痛な時間でもあった。
朝食を終えた後は少し暇な時間ができる。
桜井はだいたい音楽を聴いていたり、横になり考えに耽ったりする。
その過程で独り言がでるのだが、それは断片的すぎるため他人が彼がこんな話を言っていたなどと具体的に理解することはなかった。
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