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「桜井さん、その後の経過はいかがでしょうか」
返事はない。
桜井は無言でいた。
軽作業をしながら彼に声を掛けたのは、週に二日だけ桜井の身の回りの世話をしている日替わり担当の看護師である。
その透き通った声が思わせるとおり、彼女は非常に器量のよい女性だ。
院内にいる男の患者の中でもたびたび話題に上がるほど若い。
しかし、その彼女を前にして、桜井は無言でいる。
彼のいる病室には角を占めるように四つのベッドがあり、それぞれのベッドの周りは薄桃色のカーテンで区切られている。
桜井のベッドはその窓際の一角にあり、彼はほとんど一日中ベッドの上にいる。
今のところこの病室で治療を受けているのは桜井だけである。
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