1.境遇

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 しばらくすると、毎日決まった時間に足の怪我の回診が始まる。  経過を見てリハビリに入るらしいが、最近の報告によるとどうやら近々それに取り掛かれる見込みのようである。  それがすんだころにはもう正午も近く、また少し時間を空けて昼食がある。  その後は毎日様々なことがあり、目の検診があったり、廊下の公衆電話で知り合いに買い出しを頼む電話をかけたり、看護師さんが話をしに来てくれたり、松葉杖と看護師を伴って散歩に出掛けたりもする。  そうこうしているうちに夕食の時間がくる。そして一日が終わる。  今日というこの日、桜井にとってはルーティーンである院内生活も、当然小波にとっては新たな生活の幕開けであった。  新しい部屋、新しいベッド、新しい先生に新しい同室者。  小波は少なからず気持ちを高ぶらせ、現状に対する一時的な興奮を持っていた。
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