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桜井は大学を休学し、ひとまず足の治療に専念している。
医者の先生には眼の治療も同時に進めようと言われていた。
しかし、桜井はそれを拒んだ。
視力回復へのわずかな可能性に賭けての手術が行える程度の最低限の治療は親の同意のもとに無理強いされたが、移植やその他の積極的な治療に対しては、本人がネガティブな姿勢を貫いたため、行う予定は立てられなかった。
確かに現状からの視力の回復は現実的な話ではないのだが、桜井は視力回復の希望があるかどうかすら口にしなかった。
拒む理由を誰にも説明しようとせず、包帯を眼に巻いたまま、彼はベッドの上での生活を始めたのである。
あまりに頑固な桜井の態度に、医者も半ば諦めて彼は一生盲目で生きていくつもりなのだと思っていた。
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