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寮の玄関扉を開くと、幾つもの視線を感じて気分が沈んでくる。
寮の玄関周りはちょっとしたラウンジになっていて、普段ならすぐに再開される話声がそのまま止まっていた。
私は目線を合わせないようにうつむき加減で右手の階段に向かい、そのまま階上の自室へと登った。
3階の自室のドアにたどり着き鍵を開けていると、隣のドアが勢いよく開いた。
「アイ、大丈夫!? すっごく心配したんだから!!」
「マミ、ただいま。そんなに大声出さないで!!」
「昼までには帰るって言ってたのに、帰らないから何かあったんじゃないかって…」
そう言って私の腕をつかみながら上目遣いで見つめてくる。
「声が大きいよ。周りに迷惑だって…」
「ケガしてない? 魔物に襲われたかもって不安だったんだよ!」
本気で心配してくれていたみたいで、マミの目は徐々に潤んできた。
でも、もう少し状況を考えて欲しい…。
「お願い、静かにして…」
廊下に響く大声に、何事かと周りの扉から多くの顔がこちらを覗いている。
これ以上騒ぎを増やしたくない私は恥ずかしさのあまり、そのまま自室へと駆け込んだ。
私の腕をつかんだままのマミを引き連れて…。
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