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少年は、敵国との境にある森の中をひた走っていた。
夜の森はただの闇で、彼は何度も木にぶち当たり怪我をする。
しかしそのまま走り続けていた。
しばらくして開けた場所に出たらしい彼は、ようやく立ち止まる。
(ここまで――)
(ここまで、来れば……)
(あいつらから……あの場所から――!)
ふと、彼は自分を追う存在の顔を思い出す。
『さあ――次は貴方だ』
その不気味な笑みを。
途端だった。
「逃げられると御思いですか?」
背後から、彼にとって非常に聞き慣れた、しかし同時に、二度と聞きたくなかった声がする。
「――ねぇ? ヴァイゼ様」
「っ!?」
それを聞いて少年――ヴァイゼは立ち止まるが、振り返りかけた所で口を開く。
「――マハト、何故お前達が」
その言葉を聞き、彼を追っていた青年――マハトが鼻で笑う。
「何故? 簡単な話ですよ……貴方に失望したのです」
「な……」
ヴァイゼは唖然とした。
信頼していた臣下が、自分を信じていなかったのだから。
彼は慌てた様子で口を開く。
「お、お前達は、僕を守る為の存在でもあるのではなかったのか!?」
「……確かに、我々の仕事は各方面の政策及び第一王子の護衛です」
相手が認めると、ヴァイゼは更に続ける。
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