忘れたピース

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並べられた料理に箸を進めながら俺達は高校の思い出話に華を咲かせていた。 とは言っても出て来る話題は野球が主で、恋愛のことについてはあまり触れない。 きっと気を使ってるんだ。彼女を忘れた俺に……。 「んでさ、このバカときたら俺にこう言ったんだよな! 球が速いだけの筋肉バカには絶対負けねぇって!」 「あったあった! それって入学したての時の俺達の会話だよな! あの時はお互いに意識してて対抗意識が凄かったよな」 懐かしい。今となっては山田とは親友だけど最初は同じ投手としていがみ合ってたんだっけ。 でもそのおかげで今の俺達がいるんだ。コイツだけには負けねぇって意地張って練習して。 それでいつの間にか互いに支え合う仲間として、ライバルとして成長したんだよな。 その仲を取り持ったのが女房役の神村だったんだよ。 懐かしい話をしていると自然と笑みがこぼれた。 そんな時だった。カランカランとドアに掛けてある鈴の音が鳴ったのは。 「おっ! 皆楽しそうにやってんじゃん!」 「神村!」 「おっす! お待たせさん」 右手をピッと上げて俺達に挨拶をしたのは神村。 噂をすればなんとやらってやつか。これで全員集合って訳ね。 遅れてやって来た神村は一通りに挨拶を交わすと俺の隣へとやって来た。 手にはスポーツ店の紙袋が握られていてその中から俺にあるものを渡して来る。 「退院おめでとさん。ったく、心配させやがってこのバカ! 無事に卒業したと思ったら事故りやがって。相棒を心配させんじゃねぇよ? 約束果たせなくなっちまうだろ?」
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