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「私か徳さんだろうねぇ。私が行こうか」
母娘二人の男のいない小さな飯屋では、客でも無い見知らぬ男から、いきなり渡されても警戒されるのが目に見える。二人が頷くのを見て、桃太郎は男雛を着物の袷に仕舞い込んだ。
信介と徳市は、離れた位置の物陰から、桃太郎と店を見る。
これは、三人の掟で、互いに間違いが無いように、或いは何か予測もつかない事態に、即対応出来るように、三人で行動するわけだ。
「ちょいとごめんよ」
「はぁい」
桃太郎が暖簾の出ていない店先に声をかけると、十七くらいの若い娘が店から出て来た。
「まだ店は開けないんですけど……」
成る程、色白で顔がほっそりとした、なかなかに可愛い娘だな、と桃太郎は思う。看板娘だから、この子がいれば、店は繁盛しているでしょうねぇ……。
「ああ、いや、食べに来たわけじゃないんだよ。お嬢さんかい?おこんさんって」
娘はそうですけど……と頷いた。
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