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「おめぇも大概良い呑みっぷりだぁな」
信介も笑っているが、その眸は油断なく煌めいている。桃太郎と呼ばれた芸者と雰囲気が似ている。
「ふふふ」
艶やかな笑みで切り返す桃太郎は、しかし直ぐにその笑みを消した。
「誰だい?」
桃太郎が誰何の声を上げる。同時に障子の向こうに人影が浮かぶ。
「俺だよ」
その声に桃太郎も信介も警戒を解く。2人ともそれぞれ簪に手を伸ばしたり、懐に差し込んである短刀に手を伸ばしていた。
「脅かさないどくれよ。黙って近付くなんざ、人が悪いよ、徳さん」
桃太郎が苦笑いを浮かべながら、障子を開けた。そこには、年の頃四十を過ぎた男が座り込んでいた。
ちょっと白髪混じりの気が良い店の主という風貌。
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