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夜も更けて子の刻頃。東屋の一室で酒を片手に今回の一件が無事に片付いた事を三人は静かに喜んでいた。
「終わったな」
「ああ無事に済んだ」
「ご禁制の品が出て来るとは思いも寄らなかったねぇ」
三者三様の思いを漏らしつつ、互いに酒を注ぎあう。
「これでもう終わりなんだろう」
「ああ。徳さん。済まねぇな」
「いいさ。初めから二人が辞めると言うまでだった」
徳市は肩を竦めた。それっきり三人はただひたすらに酒を飲み干す。黙ったままでお銚子が七・八本空になった頃合いで、伸介と桃太郎が正座をした。二人とも、最初から話を合わせていたように。
「徳市さん。ちょっと話を聞いてもらえるだろうか」
「改まった伸介さんは、なんだか新鮮だね」
軽口を叩きながらも、徳市も正座をした。
「これから俺と桃太郎はひと騒動を起こす。それは今夜のような捕り物騒ぎなんかじゃ済まないような騒ぎだ」
「もしかしたら、その騒動でこの東屋にも御上の御用筋の声がかかるかもしれない。その時は、絶対に主人と客以外、関係ないことを貫き通して欲しいんです」
真剣な二人の頼みに、徳市は少し黙る。軽々しく解ったとは言えない。例え、それ以外の返事は出来なくても。二人が巻き込みたくないから、という気持ちなのは言われずとも解った。
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