いの段・お百度詣り騒乱

3/50
前へ
/90ページ
次へ
 昨夜の文には、拙い文字で辿々しく書いて有った。  ――この祠に文と銭を入れておけば、何でも願い事を聞いてくれると聞いた。ここに百文ある。それしか銭を貯められ無かった。足りない分が有れば、何とかする。頼む、願い事を聞いてくれ。  神田にあるお百度詣り石の燈籠に、ある物を隠した。それを同じ神田の飯屋をやっているおこんに渡して欲しい。  訳有っておいらは、おこんに会えねぇ。だから、代わりにどうかどうか渡して欲しい。明日の朝辰の刻に、その包みを取りに来てくれ。頼む――  金が多い、少ないは関係ない。三人はそれぞれの理由が有って、訳有りの者の願い事を聞いていたから。  そういう訳で、三人で神田のお百度詣りにまで足を運んでいた。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加