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すると岳君は縁石に乗ったまま月を見上げていた。
そして、黙り込む。
私はそんな岳君を黙って見つめていた。
岳君は月明かりに照らされ、男の人なのに綺麗に見えた。
そっか。そう笑顔で岳君は呟く。
そして、しばらくそのままお互いに黙っていた。
私は帰りたくない。この時間が続いてほしいと思っていたので良かった。
時間は午前3時。車は走っていない。
新聞配達の原付バイクだけがチラチラと走っていた。
しばらくして岳君は私を見る。
そして、こんな驚きの魔法の言葉を言った。
『なら、僕と結婚しようか。』
岳君はそう言った。
私は驚きのあまり黙り込んで目を見開かせる。
ずっとずっと好きだった人に言って欲しかった言葉。
私は小さく頬をつねる。
そして、それが現実だとわかる。
そして、我慢していた涙が頬を伝っていく。
岳君はそんな私を見てワタワタとして心配そうな顔をしていた。
『ごめん。あれ、僕嫌なこと言ったのかな?。』
子犬のようにシュンとした顔でそう呟く岳君。
そんな私は泣き顔ででも我慢できない笑い声が起きた。
しばらくしばらく笑っていた。
変わらない。いつまでも。
この人は。
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