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この世界は西側と東側に大雑把に分かれていた。
そうして否応無しに出来た巨大な二つの国をそれそれの王様が統治し、時には仲良く、時には争いながら、この世界は歴史を重ねてきた。
我々が知る程度の科学技術もあれば、ファンタジー世界に出てくる様な魔法や人外の類も共存する。そんな混沌とした世界。
そんな世界で一組の男女が知り合った。
男の方は西側出身でアッシュブラウンの髪の精悍な顔立ちの狼男。名をブラッド・スティングレーという。
西の王都で王直属の人外部隊に所属していた彼は、王の命令で東側に逃亡した兇悪妖魔を捕縛又は処刑する為に、単身東側の国へ向かった。
そこで知り合ったのがエリ・ミツミネという女性である。東側の人間には珍しい、オリーブブラウンの髪に彫りの深い顔立ち、少し手足の長い色香溢れる美女の彼女は山岳地帯の奥深くに隠れ住む異能の民の出身で、山を荒らす胡乱な者や人外を退治する役目を担っていた。
そんな二人が、ブラッドが追っていた兇悪妖魔の件で出会い、たちまち恋に落ちた。
任務を終えて、西側に戻ろうとしたブラッドは、意を決して帰る前にエリを呼び出して、こう切り出した。
「貴女に恋をした。貴女に跪かせていただきたい」
真剣な表情で言うブラッドに対し、エリは憂いを帯びた表情を浮かべ、答えた。
「…嫌よ」
「え…っ?」
驚きの表情を浮かべるブラッドに、エリは首を横に振りながら言う。
「嫌よ、絶対に嫌!だって…だって!」
「だってそんなの貴方のキャラじゃないじゃない!」
一瞬の沈黙の後、破顔したブラッドが笑いながら言う。
「クハハハッ!だよなぁ!俺のキャラじゃねーよなあっ!いやあ、ちょっと格好良さそうな台詞かっぱらって、言ってはみたものの、やっぱ駄目かあ!」
そして、ブラッドは野性味溢れる笑顔を浮かべながら、エリの顎に指をかけて言った。
「なあ、エリ。俺の女になれや」
エリは即答する。
「ええ、いいわ」
「じゃあ俺についてこい」
二人はそのまま濃厚なキスをした。
西側の王都に帰り、蜜月の日々を過ごす二人に待望の赤ちゃんが生まれた。
「ねえ、ブラッド。最初の子供は私が名前をつけてもいいかしら?」
ブラッドは二秒で即答する。
「承認」
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