53人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたらのことで僕を巻き込まないでくれます?迷惑なんで。」
「あんた、こんな時間になにやってんの?びしょ濡れじゃん。」
こいつ、僕の話聞いてんのか。
「別になんでもいいでしょ。ほっといてください。」
「ふーん?まぁ、どーでもいいけど。
その制服。俺と同じ学校だな。」
矢野の服装を見ると、僕と同じ制服を
着ていた。
「俺のこと、知ってる?」
いきなり聞かれた。
ほとんど学校行ってないし、興味ないし、知ってるわけがない。
名前もさっきのやつが呼んでたから
分かったし。
「知らない。興味ない。」
「へぇー。俺の事、知らないやつっていたんだ。」
自分がまるで有名人みたいな言いかたを
するこいつに、少しイラッときた。
「あのさ、もうほっといて。僕なんかに構っても時間の無駄だと思いますよ。」
「僕なんか…ねぇ。随分自分をさげた言い方すんのな。」
…。僕は誰にも必要とされてない。
僕は、いてもいなくても同じようなもんだ。
「僕を必要としてくれてる人なんかいません。僕はもう…死んでもいいような人なんです。こんな僕に価値なんかない。」
自分で言っていて泣きそうになる。
何度死のうとしたか。
何度兄を探そうとしたか。
けど、僕はそう思っても実行に
うつせない。
…ただの弱虫だ。
「居場所…ないんだな。
…俺んち、こいよ。」
「は?なんで僕があんたのとこに
行かなきゃなんないんだ。」
「気に入ったから。あんたが。
…あと…俺に似てるから…。」
似てる…?
どういうことだ?
「とりあえず、こい。
あんた、名前は?」
「…一条…咲矢(イチジョウ サクヤ)」
最初のコメントを投稿しよう!