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咲矢はゆっくり口をひらいた。
「僕っ…は…。」
そんなに言いにくいことなのか?
なかなか話を進めようとはしなかった。
「咲矢、落ち着け。大丈夫。
俺はお前に何があっても、ちゃんと
受け止めるから。」
「…ありがとう。僕、少しテンパっ
てた。」
落ち着いたみたいでよかった。
話す決心をしたのか、深い息をすった。
「僕…最近、恭介といると…落ち着かない。ドキドキしてまともに顔をあわせられなくて…。苦しいんだ…。」
途切れ途切れ話していく咲矢は
子犬のようにおびえていた。
俺と同じだ…。
「俺も、お前と会うと落ち着かないんだ。鼓動が速くなって苦しい。
…この気持ちって…なに?」
この気持ちはなんなのか俺には分からなかった。
こんなに人を想って切なくなったことなんてないから。
「恭介も…同じ…?」
咲矢はきょとんとした顔でこちらを
みる。
…ほら、また鼓動が速くなった。
「僕はね…。恭介が…好きなんだ。意地悪なとこもあるけど、僕自身をみてくれている。居場所を…与えてくれた。」
「…好き…?」
咲矢が言ったその言葉が嬉しくて
仕方なかった。
「いつの間にか恭介は、僕にとって一番大切な存在になっていた。」
「咲…「でも!!…恭介はただ僕が珍しかっただけでしょ?恭介のことを知らなかったから…。だから僕を拾ったんだよね…?」
なんだ…それ。
「ちがっ「違くない!」
咲矢の目からは涙が溢れていた。
「もう…優しくしないでよ…。
辛くなる…。虚しさがつのるだけ…。」
ーぎゅっ
「ふぇ?!」
俺は無意識で咲矢を抱きしめていた。
-恭介視点 end-
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