第一章

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時に零時三十二分。 まがうことなく、疑いようもなく、どうしようもない深夜。すでに“眠った”ビジネス街の中心である。 そんな人気ない場所に不釣り合いなドレスコードの二人組が、何故そんな時間帯を闊歩しているのかというと、そこにはやはりそれなりの理由が存在するのだった。 人気ない。 人の、気配がない。 人どころか、通りかかる車の気配さえ。 結局のところその理由というのはその“人気なさ”に集約されるのだけれど、これから三時間──厳密には午前零時三十分から午前三時三十分までの間、この超高層ビルの半径五百メートル以内からは、“人が完全にいなくなる”。 もちろんそれは怪奇現象とか超能力のようなオカルティックな現象ではなく、人為的で作為的な現象である。オカルトの正反対という意味でいえば、デジタルな現象なのである。 まあ実際に街の一部からとはいえ人気が完全に消え去っている時点で、それが人為的で作為的な原因で引き起こされていようが、それは怪奇現象だと言えるし都市伝説の一部として新たに書き加えられるべきだとは思うけれど。 行き過ぎた科学は魔法と同じ──とはまた違うか。 どちらかといえば『幽霊の 正体みたり 枯れ尾花』かもしれない。
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