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「ちょ……か、返せ……!」
「返しませーん。あ、もしもし? ユリカですけど。え? ……うんうん。あははは、そうそう」
楽しげな会話なんぞ始めるユリカ。
──げ。この流れはまずい。このモンキーの滅茶苦茶な要求を、ミハヤが僕へのいやがらせ×ユリカとの友情×その場のノリでオーケーしかねない。……その滅茶苦茶な要求がもしこれからの面倒事を呼び寄せるようなものだったら──。否、ユリカの滅茶苦茶な要求が面倒に直結しなかった試しがない。
ミサキは奪い取られた携帯電話を取り戻そうと画策するが、手を伸ばすたびユリカの華麗なステップに阻まれる。いやマジで素早すぎ。
「それでですねー、ちょっとお願いがあるん……え? ミサキ先輩? あー、なんか悔しがってますけど……うん? うん、オーケー? やった! わたしまだ何も言ってないけどありがとー! ……はい?」
──うわ、二つ返事だ! しかもこっちの様子を確認するあたり間違いなく確信犯です。嫌がらせです。
「……ほー、そりゃ大変ですねー。ま、二人もいるからなんとかなるでしょう。いやいや大丈夫、大丈夫。いざとなったら先輩いるし。……うん。うん、そうする。それじゃーバイバーイ」
「うわ、マジで終わった……」
座って見てるだけの簡単なお仕事だった筈なのに、ユリカの性癖とミハヤの悪意のおかげで朝まで不眠の完徹コースに突入である。自身の不運を嘆く事後処理担当(ミサキ)。これから夜を徹しての“清掃作業”と思うと、元々低かったテンションは地面スレスレへと急降下せずにはいられない。
ユリカへと恨みがましい視線を向けるミサキ。
(……ん?)
と。
そこでふと彼女の不思議な表情に気が付いた。
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